2023.5.23
広島ADC年鑑2022のアートディレクションとデザインを担当いたしました。過去グランプリ受賞者がADとなって制作してきた歴史があり、12冊目の年鑑制作で私(kirin 永戸)が携われたことは本当に光栄なことでした。
あまり深くコンセプトや制作への想いを発刊パーティーなどで話していなかったのですが、こういった場所ですので、書いてみます。
デザイン
1 >> 掲載作品に品格を
審査会当日は1日で過ぎますが、年鑑は一生残ります。
実は作品の露出って年鑑掲載後の方が、多くみられる可能性がある。
そう思い、掲載作品たちに敬意を込めてより品位を感じられるように努めました。
具体的には、凛とした書体、雰囲気を感じる作品写真のトーン、レイアウトは端正でキレのある印象を持たせたり、webや映像作品の絵柄を大きく配置しました。
デザイン的なアプローチでこれらを積み上げで品位を醸し出しました。
2 >> 年鑑の造本設計はプロダクトデザイン
本の印刷プランは、グラフィックデザインの領域。
ですが、あくまで感覚的にですが、プロダクトとしてプランニングを設計しました。
意識したのは、本の形から重量感や手触り、製本、紙に定着する色の具合。
ページをめくる感覚。
また、読み手のめくり方も千差万別。
じっくり見る人、軽くペラペラの人、ダイレクトに当たりをつけて開く人。
それらを考慮して、薄くめくりやすい、心地良い手触りの書籍用紙を本文では採用。紙を薄くする事で本自体を軽量化も期待できます。
めくる際に綴じの力を受けにくいコデックス製本。
表紙のデザインがベストな定着はどんな印刷か...
シルク印刷とUV印刷を試し、版ズレの実現性と発色のバランスが良かったUV印刷を採用しました。
それらから手に取った際の感覚、年鑑を読み終わるまでの体験向上を構築しました。
3 >> ”天邪鬼(あまのじゃく)” 今までのものとは別のものを。
歴代グランプリを受賞した時のADが担当することで、年鑑自体にADの個性が反映されてきたように感じています。
今回も少なからず、自分の個性も反映されるであろうと想定した際に、過去のものと被ってしまわないようにしたいと思いました。
そうすると、今までの逆。
天邪鬼的な思考になりました。
表紙の配色(赤・蛍光色)や作品ページのフォーマット(クレジットを右に)、作品を喉にかけたコデックス製本など、歴代のどれかと同じにならない変化を意識しました。
本来、物作りにおいて、その思考が強く出過ぎるべきではないと思うのですが、デザインの年鑑という超専門的な内容なので、ADの個性(=天邪鬼的な思考)もありだと判断しました。
4 >> やっぱり売れて欲しい。
世の中で価値あるものは、人それぞれ違いますが、分かりやすい指標に多くの人から支持されるという“数の価値”もあると思います。
ですので、年鑑の販売を行うという性質上、『歴代で一番売れて欲しい。』強くそう思いました。
この点で意識したのは、年鑑の満足感です。
僕的には、売値に対してその物の納得感さえあれば、購買は行われると確信しています。
ですので、年鑑の最後の方まで満足感のある構成にすべく、後半ページにある、環境、web、動画作品の見せ方を作品サイズを大きく配置するなどして、見応えをつくりました。
また、上記(2)に書いたように、年鑑の体験向上も納得感に貢献すると思っています。
そして、3年ぶりに開催した審査会だったこともあり、例年よりも多くの出品数から入選した作品はおのずと質が高くなったことも非常に大きな要因だと思います。
ですので、年鑑のADに出来ることは限られていますが、結果、歴代で一番売れたとのことだったので、非常に嬉しく思い、この背景や偶然に感謝しています。
長々と書きましたが、
年鑑に制作に関して意識したことを記録も込めて記載しました。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
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